

第173回直木三十五賞の候補作に、柚月裕子さん(釜石市出身)の「逃亡者は北へ向かう」が選ばれました。地元・東北を舞台に描く、震災クライムサスペンスです。
東日本大震災直後に殺人を犯し、死刑を覚悟しながらもある人物を探すため姿を消した青年・真柴亮。刑事の陣内康介は津波で娘を失いながらも容疑者を追う。2人はどこへたどり着くのか─という長編小説。新潮社刊行、四六判384ページ、税込み2090円。
柚月さんは2025年2月の発売時、「構想は10年以上前からあり、書き始めていました。しかし、執筆をした日の夜に必ずつらい夢を見るのが苦しくて、なかなか書き進めることができませんでした。そして気がつくと随分時間がたっていました。ですが、つらさに耐えながら前に進もうとする方々の姿に勇気づけられ、私も前に足を踏み出さなければいけない、その思いでこの物語と向き合い、完成させることができました。主人公は、自分の力ではどうしようもない出来事に巻き込まれながら、目的地を目指す青年です。どうか多くの皆さまにこの物語が届くことを願っております」とコメントしています。
柚月さんのノミネートは第154回の「孤狼の血」(KADOKAWA)、第166回の「ミカエルの鼓動」(文芸春秋)に続く3度目。今回の選考会は7月16日午後4時から。「逃亡者は北へ向かう」を除く候補作は次の通り。▽逢坂冬馬「ブレイクショットの軌跡」(早川書房)▽青柳碧人「乱歩と千畝 RAMPOとSEMPO」(新潮社)▽芦沢央「嘘と隣人」(文芸春秋)▽塩田武士「踊りつかれて」(文芸春秋)▽夏木志朋「Nの逸脱」(ポプラ社)