小さな町の大きな挑戦 大迫をワインの王国に―

日本ワインフェスティバルとは…
 ワインの里、花巻市大迫に全国各地の日本ワインが集まるワインの祭典。会場にはワインブースやフード屋台、大型テントが並び、初夏の風を感じながらワインやワインに合うおつまみが楽しめます。今年は北海道から九州まで過去最大となる48ワイナリーが参加、全国最大級の規模で開催されます。

開町を記念して開催 宿場のにぎわいを再び

 大迫でワインフェスが初めて開催されたのは2017年。「三陸と内陸を結ぶ宿場が置かれ開町400年の節目に何か大迫らしい事業をと企画したのがはじまりでした」と話すのは、第1回から実行委員会委員長を務める山影義一さん。そこで目を付けたのが世界でも評価の高い特産のワイン。ワインを通じて町を盛り上げようと動き出す。

 しかし、立ち上げ当初は何もかも手探りの状態で、不安も大きかった。「お酒を楽しむイベントなのに町内には鉄道もない、泊まれる宿も少ない。本当にお客さんが来てくれるのだろうか、と最初はみな半信半疑でした」という。だが、ふたを開けてみれば、市外はもとより東北各地からも人が訪れた。初回来場者数は約3700人、町の人口に匹敵する大勢のお客さんでにぎわった。

コロナで中止に 復活の決意へ

 イベントはワイン愛好家を中心に人気が広まり、ファンが定着。来場者数は5千、6千と順調に伸びたが、2020年、新型コロナの影響で開催を見送った。

 再開したのは2年後、人数制限を設けるなど対策を講じて復活させた。当時は反対する声もあったというが「続けていくことが町の未来にきっとつながる」と委員会の思いは一致。「あのとき、思い切って良かった」と語る山影さん。市民や関係者からも「よくやってくれた」と感謝の声が届いたという。

試行錯誤の連続 今年から入場フリーに

 7回目となる今年は、入場整理券やチケット制をなくし、誰もが自由に入場し飲食が楽しめる。また、利便性を考慮し、無料シャトルバスを石鳥谷駅から初運行する。「7度目とはいえ毎回が試行錯誤です。出来ることから手を尽くしていきたい」と山影さん。「まずは多くの人に足を運んでもらいたい。体験や交流を通じて地域の活性化につながれば」と期待を込める。今年は過去最大となる48ワイナリー約200銘柄のワインが集結する。“大迫をワインの王国に―”。日本一の祭典を目指し奮闘は続く。

(いわにちリビングun 2025年5月16日号掲載 特集「北の小さな町が、ワインの王国になる。」より)

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