岩手を感じるクラフトジン 世嬉の一酒造の「清庵―Seian―」

「清庵―Seian ―」は一関市のクラフトビール醸造所から生まれたクラフトジン。世嬉の一酒造がアルコール原液から自社製造にこだわって2020年10月に発売した。風味づけのボタニカル(植物)の一つに、地元産のクロモジの枝と葉が使われている。

 ジンは欧州発祥の蒸留酒。アルコール度数37・5%以上で、ジュニパーベリー(セイヨウネズ)の香りを付けて蒸留するのが特徴。アルコール原液やボタニカルの種類は蒸留所によって異なり、さまざまな味と香りは「飲む香水」ともいわれる。

 同社が初回にリリースしたのは、自社醸造のクラフトビールを蒸留した大麦由来のジン。ボタニカルにはジュニパーベリーのほか、岩手産サンショウの実、近くから調達したヒバの葉、そして一関産クロモジの枝と葉を使った。「柑橘系の香りもあるクロモジを加えることで、やわらかく飲みやすくなった」と佐藤航社長は話す。

 丁寧に作ったジンは、食のプロが審査する「料理王国100選2021」で優秀賞を受賞。リピーターも増えている。「ボタニカルは岩手らしさを表したいと思って選んでいる。クロモジの香りの引き出し方をもっと研究していきたい」と佐藤社長。静かな落ち着きのあるジンを、一日の終わりにいかが。

初回ロットで使用したボタニカル。右がクロモジ。フレッシュな芳香を出すために生枝を削って漬け込んだ
左は「清庵―Seian―」ブランドの「クラフトジン」(アルコール度数40%、330mL・2200円)。関連商品として、炭酸やレモン果汁を加えた「クラフトGIN& SODA」(同8%、330mL・550円)もある。ボタニカルを変えた新バージョンも発売中

世嬉の一酒造
一関市田村町5-42
0191・21・1144
営/9時30分~17時30分(直売所)
通販サイト https://www.sekinoichi.com/

(いわにちリビングun 2021年11月19日号掲載 クロモジ特集より)

クロモジ

いい香りがあります。

日本の山地に自生しています。
昔から活用されてきましたが、最近、再注目されています。

その樹木の名は、クロモジ。

森林資源が豊富な一関で生まれたクロモジ商品を紹介します。

クロモジとは
 北海道南端~九州の広い範囲に分布するクスノキ科の落葉低木。成長すると幹に黒い斑点模様が現れ、まるで黒い文字が浮き出たように見えることが名前の由来。リラックス作用が期待される「リナロール」を主成分とするいい香りは、資源保全のため手に入りにくくなったローズウッドに類似。日本固有種の香木として「和製アロマ」「国産ハーブ」といわれる。

日本人との関わり
 江戸時代の薬用植物図鑑に登場するなど、古くから日本人にとって身近な存在。特に和菓子用の高級爪ようじはそれ自体が「黒文字」と呼ばれ、烏樟(うしょう)という生薬としても活用される(「養命酒」が有名)。枝を煮出してハーブティー、精油を抽出してアロマオイルと活用の幅が広がっており、近年は健康効果に対する研究も進められている。

参考資料/クロモジ研究会「『クロモジ』の魅力を再発見」

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