釜石市出身の作家・柚月裕子さんの最新作「逃亡者は北へ向かう」の連載が、8月から「週刊新潮」で始まりました。東日本大震災を経験した作者が、被災で失ったもの、のちに得られたものを胸に書く”3.11クライムサスペンス”です。
柚月さんは今作が「週刊新潮」初連載。第1話の冒頭では、雪がちらつく3月の東北で、警視庁の特殊急襲部隊(SAT)がある指名手配犯をライフルで狙う緊迫のシーンが描かれています。挿絵を担当するのは新鋭のイラストレーター・まつもとみなみさんです。
今作の構想は10年前からあったものの、執筆のたびにつらい夢を見るのが苦しく書き進められなかったこと、つらさに耐えながら前へ進もうとする人々に出会い連載を決めたことを明かした柚月さん。主人公は自分の力ではどうしようもない出来事に巻き込まれながら目的地を目指す青年だといい、「主人公と一緒に、私も作品のゴールにたどり着けるよう頑張りますので、最後までお付き合いいただきたいと思います」と語っています。「週刊新潮」2023年8月31日発売号より毎号連載中。
柚月裕子(ゆづき・ゆうこ) 1968年釜石市生まれ。2008年に「臨床真理」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞しデビュー。2013年に「検事の本懐」で第15回大藪春彦賞、2016年に「孤狼の血」で第69回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。そのほか「慈雨」「盤上の向日葵」「ミカエルの鼓動」「教誨」など著書多数。