2020年春、海を望む景観が美しい宮城県気仙沼市の内湾地区に誕生したブラック・タイド・ブリューイング。ホップをふんだんに使ったIPA、爽快なラガーなど多種多様なビールを醸し、「どれを飲んでも外れがない」と全国のビール通をうならせている。
震災で甚大な被害を受けた同地区。醸造所は「クラフトビールによるコミュニティーづくり」という可能性に懸けた全国の個人・団体が出資して設立された。醸造責任者を務めるのは気仙沼にほれ込んで移住した米国人のジェームズ・ワトニーさん。醸造所のポリシーは「Brewed with pride in Kesennuma」。“気仙沼でつくれることに誇りを持ち、気仙沼の人が誇れるビールをつくろう”という思いで品質にこだわるほか、消費者と触れ合うビアフェスなどのイベントにも力を入れている。
「いろいろな味を楽しんでほしい」とさまざまなスタイルを造っており、醸造所に併設したタップルームでは樽生で6種類、缶で4~6種類を販売する。3~4カ月に1度は造る準定番の「KESENNUMA PRIDE」はシトラス&パイニーな香りが特徴のIPA。小麦も使うラガー「DAYS OVER」はうまさもキレもあって飲みやすい。クラフトビールの本場・米国ポートランドの味が再現されている。
醸造開始から2年半。東京や関西のビアバーへの出荷が増えるにつれ、遠方から醸造所を訪れるファンも増えてきた。アシスタントブルワーの丹治和也さんは「造られている背景を楽しめるのがクラフトビールの魅力。ブラックタイドを飲むときに、気仙沼を感じてもらえればうれしい」と願う。10月8、9日に東北各地のブルワリーを招いたイベント「気仙沼オクトーバーフェスト」を開催。「いろいろな味を飲んで、好きな味やブルワリーを探してみて」と話している。
(いわにちリビングun 2022年9月9日号掲載「街角ブルワリー」特集より)