注ぎ口が細いドリップポットは、おいしいドリップコーヒーを入れるための必須アイテム。これを伝統的な南部鉄瓶で作ったのが、鋳物の街・奥州市水沢羽田町にある「鉄瓶 遊山」のドリップ鉄瓶。今年6月の発売以来、全国のコーヒー好きから問い合わせがあり、すでに納品まで半年以上待つ人気となっている。
「お客さまから欲しいという声をもらうのはやっぱりうれしい」と反響を喜ぶ同工房の下野典行さん。数年前に「ドリップができる鉄瓶が欲しい」という声を耳にしたことから制作を始めたが、細い注ぎ口は型を使う南部鉄瓶ではかなり難しい形状。それでも鋳造にこだわり、独自に工夫を重ねて難問をクリア。ポイントは細く長くカーブした注ぎ口だが、ポット部分のフォルムも美しく、取っ手の革細工は機能的かつ個性的。「自分ならではのオリジナル作品ができたと思う」と下野さんは胸を張る。
鉄瓶で沸かしたまろやかな湯を、ドリップポットに移し替える手間なくそのまま注げるのがドリップ鉄瓶ならではのメリット。「コーヒーと鉄瓶が好きな人にはぴったりだと思う」と話す下野さん自身もドリップ鉄瓶を愛用中で、「使うのが楽しくて、コーヒーにハマってしまいました」と笑う。作り手の誇りと愛情がこもったドリップ鉄瓶が、コーヒーをさらに味わい深いものにしてくれそう。
DATA
鉄瓶 遊山
住/奥州市水沢羽田町宝生14-4
問/tetsubinyusan@gmail.com
(いわにちリビングun 2021年12月10日号掲載 「鉄」とコーヒー特集より)